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工務店の家守り術 私の「家守り」スタイル⑦

> 2010年 1月30日  P84/P85/P86/P87 掲載
 ・ 新建新聞社
   工務店のための実務ノウハウ  『新建ハウジング プラスワン』 No.503
私の「家守り」スタイル
  人の暮らしを支える工務店 -その7-

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〓 人付き合いにはいろいろな感情が。
「満足」「喜び」を引き出すために 〓


アフターの人材や方法 悩み抱える工務店

 約1年にわたって展開してきた連載も、今回が最終回となりました。

 リノベーションのことからアフター・メンテナンスのことまで、当社の「家守り」のスタイルを中心にお伝えしてきましたが、生涯にわたってお客様の暮らしに寄り添い、家にまつわるさまざまなフォローを行っていくのは工務店の基本姿勢だと思っています。

 しかし建てた後のことまで手がまわらない、OBのお客様との接点をどうつないでいいのかわからないなどの声もよく耳にします。そこで、よく聞く「家守り」の問題点と解決策について、新建ハウジング編集部とのやり取りで話したことを、Q&A形式でまとめるかたちでご紹介します。

気になる点は施主に忠告 いい関係を築くカギ

【編集部】―いろいろなアフターの具体例を紹介いただいてきましたが、ある意味で肩の力を抜いた、気軽な関係を築いているように見えます。どのような心持ちで顧客と接しているのですか。OB顧客からの電話が「怖い」「嫌だ」と思う】」とはないですか。
 基本的に、お施主様からの電話が「怖い」と思うのは、施工時に何らかの問題や気になることがあった場合だと思います。「あのことに関するクレームではないか」と考えてしまうのですね。

 実際、人間のすることですから、完璧なことはありません。しかしだからこそ、気になることがあれば、起こり得る問題を施工する前にお施主様へきちんとお話し、そのうえで施工するなり、別の提案をするなりといった対応をとるべきです。

 そして、確実に問題が起きると判断したときは、毅然とした態度でその内容を伝え、たとえば「この仕様はこういう理由でできません」と、はっきり断ることも必要です。

 断ったら嫌われてしまうのではないか、仕事をさせてもらえなくなるのではないか、などと考えがちですが、相手のことを考え、そのほうがプラスになることをきちんとお話すれば、思いは伝わると思います。

 ただしそれでも、自分の意思を貫きたいお施主様もいるでしょう。その場合は打ち合わせ事項を記録として残すことが大切です。後日、起こり得る問題がやはり起きたとしても、事前に「確かに忠告していた」という記録が残っていますから、そのことで一方的な責めを受けることはありません。

 お施主様も「忠告してもらったのに、自分が聞かなかったのでこうなってしまった」と感じ、問題の解消のために相談してくるのではないでしょうか。

 そのときは「だから言ったのに…」という態度をとるのではなく、具体的にどう対処したらよいかをプロとして提案することです。プロだから頼られているわけですし、また答えも導き出せます。

 結局、満足度アップは、そうしたことの積み重ねですね。人と人のお付き合いですからいろいろな感情があると思いますが、楽しみや喜びもまたそこにあるのだと思います。

常に情報発信に心がけたい

―マンパワーや資金力の不足を補いOB顧客といい関係を続けていくため、多くの工務店が「ニュースレター」や「イベント」などを行っていると思います。しかし疎遠になってしまった場合、あるいは疎遠になってしまっている場合、接点を回復するにはどうしたらいいのですか。
 疎遠になるということは、自分からのアプローチが不足しているということですね。そうした場合は、こちらから出向いたり、電話で近況を知らせたり、相手の様子を確認したりする必要があると思います。私の場合は年に数回、そんなことをやっています。

 たとえば新築当時のファイルを見直して、これからメンテナンスが求められる場所などを話題にし、そのときに必要な資金や手続きなどをわかりやすく説明してあげるのも一つの策。また仕事以外でも、趣味や生活に関して相手にお得だと思われる情報があれば、伝える努力をすることだと思います。

 情報発信は常に心がけていますね。確かに自分がされて嫌になるようなお付き合いはごめんですが、お施主様へ連絡するタイミングはいつがいいのかとか、とくに決まったルールを自分のなかに持っているわけではありません。季節の変わり目とか、なんとなくその家族を思い出してしまったときです。

 実際、あまり深く考えず、なにげなく電話で近況確認することが多いです。「何も用事はなかったのだけど、どうしているかなぁと思って電話してみました」と。

 そんなときに限って、お施主様の方からも「なんとなく大滝さんのことを考えていた」と言われることが少なくありません。奇遇なものだと思います。

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親和創建の「完成建楽会」。OB顧客にも必ず連絡ハガキを送る。
ハガキが到着した段階で電話をもらうことも多い。

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年1回、会社敷地内で行う夏祭りのイベント

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夏休みの時期になると、親和創建の作業場には毎年必ず数組のOB顧客が親子工作の相談に訪れる。

話下手でも一生懸命伝える 女性スタッフの活用も

―一般論ですが、よく大工・職人は口下手・話下手と言われます。「情報発信」「コミュニケーション」と言われても、家業型の大工工務店で現場に追われていたりすると、なかなか一歩踏み出せないのではないでしょうか。何かいいアドバイスはありますか。

話の下手な大工でも、一生懸命に伝える姿勢、
相手の身になって聞く姿勢は施主に伝わっていく


 当社は、私と事務の女性以外、全員が大工さんです。確かに、大工・職人さんで話下手な人は多いと思います。そのため、言葉が少ないゆえのすれ違いがあったり、先入観による思い込みでボタンの掛け違いをしてしまったり。

 かなり前のことですが、現場で「おはようございます!」と声をかけても職人さんの誰からも返事が返ってこなかったので「この現場ぁ、誰もいねえのかあ!」と啖呵を切ったことがあります。すると、そこかしこで「おはようございます」とボソボソ小さな声があがりました。

 いくら職人さんでもあいさつくらいは気持ちよく交わしたいという気持ちだったのですが、そうした具合に、悪気はどこにもないのに損をしてしまっている面も多々あるように思います。

 そのため、口下手・話下手と思われる大工さんは、お施主様と話すとき、思ったことを再度お互いに確認するという行為を一つ足してはどうでしょうか。

 たとえば、話すことが苦手であれば絵や図を描いて表現する。そのほうが視覚に訴えることができるので、よりよいコミュニケーションがとれたりもします。

 「俺は話下手だから、うまく説明できないんだけど・・・」と前置きをしながらも、一生懸命に伝えようとする姿勢や、相手の身になって聞こうとする姿勢は、知らず知らずお施主様に伝わっていくはず。またそこが、好感度になったりもするわけです。

 しかし、家族というものは世帯主のお父さんだけではなく、お母さんをはじめお祖父さん・お祖母さん、子どもたちもいるわけですから、一人で話を受け止めるのは大変な技量が要りますね。そういう意味では、パートでも女性スタッフがそばにいるととてもよいと思います。

 女性の活用は、アフターに必要なマンパワーの不足を補うことはもちろんですが、こちらの説明とお施主様のとらえ方に矛盾を感じたとき、客観的な意見を求めることができる存在としても有効でしょう。

 ただしパートさんでも知識は必要で、自分たちの会社の住まいの特性くらいは説明できないといけない。また住宅業界で話題になっいることも、できれば知っておいてほしい事柄です。そうした知識があまりに欠如していると、アダとなる場合もあるかもしれません。

 しかし、活用の場を設定して役割を明確にしてあげることで、それは解消できます。また仕事にやりがいがあれば、自ずと知識もつくと思います。あとはお施主様が心地よく居られる空間(事務所や見学会場など)をつくり、その場の聞き上手になってあげることに重点をおいて立ちまわってもらうことです。

家は人の「生き方」を具現化 前向きに楽しく生きる

―そうしたなかで大工・職人が持っている知恵が住まい手に伝わり、家を長く大切に使おうという意識へつながっていけばいいですね。家と人とのお付き合いを通じて提供できる豊かさ、得られる豊かさとは、大滝さんにとってどんなことですか。
 家は植物や動物と同じで、話すことこそできませんが、何らかのシグナルは常に発信しています。自分も含めお施主様ご家族も日々忙しく、生活していくことだけで精一杯なのですが、ほんの少しまわりに目を配れば、家はたくさんのことを伝えてくれる気がします。

 それは自分の感性を磨くこと、季節を楽しむこと、いろいろなことに興味を持ち体験すること、年齢や性別に関わらず人とのつながりを大切にすること、自分の弱点を誰かから補ってもらうこと、人の弱点を補ってやること、人間以外も愛しむこと。そうしたことと無関係ではない気がします。

 そしてそんな風に過ごしていると、自然にたくさんの人やものと仲間になれます。そこから、生きることについて多くのことを学ぶことができ、そのなかからまたお施主様ご家族とのコニュミケーションが広がります。

 上手く付き合うという感覚ではなく、まるごと受け止めたり、受け止めてもらったりしているような感覚ですね。ですから、まだまだな私自身を実感し、日々努力しています。
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親和創建の断熱改修(リノベーション)。
施主が住みながら行うこともあり、大工・職人とのつながりも生まれる。

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親和創建のほとんどの社員が大工。現場が終わると必ず集まって夕礼を行い、進ちょくや問題点などを話し合う。「完成建楽会」のスタッフも大工が務め、顧客対応の窓口になる。

OB顧客といい関係を続けていくコツ

①物事のメリット・デメリットをきちんと伝えること
②伝えるのが下手だからとあきらめないこと
③施主を突き放さず常にいっしょに解決策を探ること
④一人でやろうとせず仲間(たとえば女性スタッフ)の力を借りること
⑤自分自身が豊かだと思う生き方を実践すること



●連載の終わりに
 このたび、新建ハウジングプラスワンで7回の連載を受け持つ機会を与えていただきました。どのくらいお役に立てたかはわかりませんが、多少なりとも自分たちのやってきた事例を参考にしていただけたら幸いです。

 家を建てるということは、そのご家族の人生において大きな大きな出来事です。建てる前の段取りから過程を楽しみ、できあがって喜びが満ちてくる。そして今度は、そのご家族は住まうということを始めます。そのときに頼りになるのが、「家守り」工務店です。

 建てた後も、その家族が織り成す人生のなかで、何回となく家にまつわるお手伝いをさせていただけるのが、私たちの仕事の素晴らしいところだと思います。たくさんの人生のなかで、ほんの少し背中を押してあげたり、思いとどまらせたり、いっしょに泣いたり笑ったりできるような楽しい仕事、やめられないですよね。

 お施主様とともに、お互い楽しまなきゃ損。いろいろ厳しい時代ですが、がんばっていきましょう。『笑う門には福来る』で、きっといいことはやってくる。読者の皆様には、長い間お付き合いいただきまして本当にありがとうございました。
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by shinwasouken | 2010-01-30 16:00 | 連載-新建ハウジング +1

工務店の家守り術 私の「家守り」スタイル⑥

> 2009年11月30日  P22/P23/P24 掲載
 ・ 新建新聞社
   工務店のための実務ノウハウ  『新建ハウジング プラスワン』 No.497
私の「家守り」スタイル
  人の暮らしを支える工務店 -その6-

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〓 工務店と顧客は密接不可分の関係
ともにつくり、ともに守っていく


いっしょに創りあげた家だからこそ大切に

 一番目に紹介するのは若夫婦とお子さんが3人のご家族。まだお子さんが小さいので、常に目の届くところにいてほしい。家事の動線が便利で、お料理をしながらお洗濯やお風呂の段取りもできるのが理想。将来の予算や子どもたちの成長に合わせ、自由につくれる2階空間がいい、などの希望でした。

 なので、1階は大黒柱を中心に和室とリビングダイニングが続いている大空間。全室暖房ですから、廊下さえもお部屋のスペースにしています。2階は運動会ができるようなオープンさで、すごい迫力となりました[下の写真参照]。
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若夫婦に子供が3人の住まい。
高性能のメリットを活かし、2階を「運動会」ができるような大空間にした

 二番目は、ご両親と娘さんの3人家族。和風空間が好きなので、外観も玄関ホールのおもてなし部分も「和」を入れたい。和室と座敷の続き間がほしい。リビングのくつろぎスペースには小上りもいいよねと、そんな希望です。

 こちらも高性能住宅のよさを活かし、続き間の縁側は、部屋との間に戸を不要にしました。ゆったり和風の大広間が完成です。玄関正面は埋め込み飾り棚で季節のあしらいができるしかけをつくりました。
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和風空間が好きな3人家族の住まい。
続き間の縁側と部屋の間は戸を不要にし、ゆったりした大広間にしている

 2階の主寝室には、奥様が結婚したときに持ってきた婚礼ダンスで仕切って収納スペースをつくっています。いつでも、自分でいい大きさに変更可能です[プラン・左の写真参照]。
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 どの住まいも、お施主様が自らアイデアを出し、いっしょに創りあげてきたもの。だからこそ、大切に愛着を持って維持管理してもらっています。

 ほかの誰かがしてくれるのではなく、お施主様たちに家のベストな状態を知ってもらい、傷んだときはどんな手入れをしていけばいいかをプロとしてアドバイスする。そのための知識と技術を常に磨いていきたいと思います。

施主との対話によって私たちも育ってきた

 たとえば当社のお施主様のなかには、新築からのお付き合いではなく、他社とのトラブルの相談やリフォームをきっかけとしてお付き合いする方も多くいます。

 あるとき、知り合いに『家づくりって大変なものなの?大滝さんを見ているといつも楽しそうに仕事をしているから、楽しいものだと思っていたのに・・・。実は友だちがすごく苦しんでいるの』と言われました。

 そこで『だったら、話だけでも聞けるから連れて来てみたら?』と。そして面談してみると、その方はこれから新築が始まるのに、パートナーである工務店さんとの信頼関係がギクシャクして不安に押しつぶされそうになっていました。

 契約解消や工事の中断はできないとのことだったので、今後の考えられる不安要素を聞き、相手方と向き合う方法をお伝えして相談役になりました。いろいろな問題はありながらも家は無事に完成。しかし相手側の工務店さんとはその後お付き合いをせず、住まい方やアフターメンテナンスに関しての相談が私たちに来ます。

 私たちが建てた家ではないので、メンテナンスが有償になる場合もあるのですが、お金の問題ではないそうです。

 またあるお施主様は、お子さんが化学物質過敏症(農薬暴露による突然の発症)になっていてたくさんの制約があるけれども、中古住宅で購入した家をリフォームしたいという希望でした。いろいろな工務店さんに相談したものの簡単に「自然素材を使えば大丈夫」という話ばかりで・・・と、私たちの元に来られたのです。

 私たち自身、化学物質過敏症に関して深い認識があるわけでも、経験があるわけでもありませんでしたが、自然素材が万全ではないことだけは知識としてありました。そこで手探りしながら、自然素材を主とした素材のサンプルをお施主様に数日預け、その反応をみてからリフォーム計画を進めることにしました。

 この方は最終的に数年にわたって数回リフォームをお手伝いし、結果、快適に過ごしてもらっています。

 こうした体験をさせてもらうことが、自分たちにとっていい勉強となり、今後の糧となっています。

顧客を身内のように思うのは、あたり前の姿。
単に家を売る相手では家づくりは成り立たない


施主は売る相手ではなく身内のような存在

 お施主様のご家族それぞれが、いろいろな悩みや問題を持っています。これを解決してあげるには、まず、その悩みを打ち明けるタイミングをきちんとつくってあげることが必要です。

 そして次に、私たちつくり手は少しだけ専門的な知識を持っていますから、それを総動員してアドバイスをするということだと思います。

 家を建てるときの悩み、家を直すときの悩み、また住んでみた後だからこその悩みもあります。自社で建てたからではなく、どんな家であっても、住まい手が末永く家族とともに仲良く豊かに住みこなしてもらいたい。その思いの分、一つひとつの相談に耳を傾け、いっしょに悩み、解決する方法を探りたいと考えています。

 家づくりはお施主様がいなければ成立しません。しかし、お施主様を単に家を売る対象とだけ位置付けて受注活動を展開していたら、私たちのような工務店の経営はこれから厳しいと思います。

 私たちにとって、お施主様は単に家を売る相手ではなく、身内のような存在です。私たちは家をつくります(あるいは売ります)が、それは使ってくれる(買ってくれる)人がいて初めて成り立つこと。冒頭に紹介したプランなどは、ともに刺激し合って協働した結果から生まれたものにほかなりません。

 結局、工務店とお施主様は密接で分けることのできない関係。身内というのは誇張でも何でもなく、あたり前の姿だと思うのです。

 ですから、日頃からいろいろなことで連格が簡単にできるうえに、ときには甘えさせてもらったり、甘えてもらったり、お互いが支え合って生きています。そのなかで私たちはお施主様にはっきり思いを伝え、お施主様も私たちに思いをぶつけ、一定の緊張感を持ってともによい家、よい暮らしを目指しています。

 先日も、お施主様の家で何気なく言った「私たちが○○さんのために一生懸命建てた家なのだから、ちゃんとしてもらわないと困ります」という言葉に、当のお施主様が感激してくれて「私たち以上に我が家を大事に思ってくれている」と言ってくれました。

 こうしたことは受注戦略でも受注ノウハウでもありませんが、しかし私たちのビジネスそのものです。
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by shinwasouken | 2009-11-30 16:00 | 連載-新建ハウジング +1

工務店の家守り術 私の「家守り」スタイル⑤

> 2009年 8月30日  P51/P52/P53 掲載
 ・ 新建新聞社
   工務店のための実務ノウハウ  『新建ハウジング プラスワン』 No.488
私の「家守り」スタイル
  人の暮らしを支える工務店 -その5-


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〓 点検を背景に暮らしを
さり気なくサポート。半年間で頼れる存在に 〓


点検しながら生活に密着した情報を提供

 私たちの場合、定期点検の最初は引き渡し後1カ月以内。「使い勝手はどうですか?」「住み心地はいかがですか?」と、電話連絡や顔出し訪問をします。そのあと、3カ月から6カ月以内に季節の使い勝手を説明に行きます。

 内容は、寒い時期なら暖房の使い方や温湿度のバランス。いままでの生活のように暖めすぎないことがポイントです。具体的には20℃前後の室温と、45%前後の湿度を保持する。高性能住宅であっても動くと汗ばむような設定はダメで、適度な服装や部分採暖でエコ生活を送る工夫を伝えます。

 暑い時期なら、涼しい時間帯の外気の取り入れ方やグリーンカーテンによる日差しの遮断の仕方などを話します。あるいは、家庭菜園と組み合わせた一挙両得な提案。実施しているOB施主様の例や、住まい手としての私たちの考えを説明します。

 暖冷房以外にも、たとえばガスコンロからIHに変更したお施主様の、お料理の感覚が違うという悩みに対するアドバイス。タイマーや余熱を使ったお手軽料理を提案します。また、あらわしにした梁の上の掃除方法などもよく聞かれることです。

 半年くらいでは住宅は何ら問題ありませんが、この間に、より生活に密着した情報を提供していくことで、一番近い頼りになる工務店になっていけるのではないでしょうか。

施主に動いてもらい保守の経験を積ませる

 私たちの定期点検はこのようにスタートしますから、当然、お施主様には「いつもと違う?」「これで良かったのかな?」と思ったときは些細なことでも迷わず連絡してほしいと話しています。

 連絡をいただくことで、仮に何もなければ安心できるし、何かのトラブルの前兆であれば未然にそれを防止できます。このときのポイントは、電話をもらったらできるだけ早めに駆けつける、というだけでなく、状況を十分に聞いて応急処置の仕方を伝え、お施主様にも動いてもらうということです。

 たとえばボイラーが突然停止してしまった場合、本体または操作パネルに何のエラー番号が出ているかをお施主様にチェックしてもらい、その内容を取扱説明書などで確認してもらいます。そこにはトラブルの原因と対処法も書いてあるので、よく認識してもらって、業者に頼むかどうかの判断を委ねます。

 半密閉タイプの温水暖房の場合、水の補給だけで直るケースもあるので、そうしたときはお施主様自らがトラブルに対処することで、次の突発事態に対応できる経験を積むことになるのです。

トラブルを自分で解決できたことが自信に

 ほかにも、照明器具の「ホタルスイッチがついていない」「スイッチが壊れたみたい」といった連絡に対しては、大半が本体との連動によるものだと説明し、電球を交換してもらって点くかどうかを確認してもらいます。点いた場合は電球の芯切れが原因で、そうでない場合は照明器具本体かスイッチの故障です。

 こうしたことを一つひとつやってもらい、ときにはやって見せ、保全の仕方をお教えしていきます。住まいのトラブルを自分で解決できれば、それはお施主様の自信につながります。

 実際、お施主様は「こんなことくらいで電話していいのかな?」「笑われたりしないかな?」と思う気持ちがあって、連絡を躊躇していることが多いのです。そんなときは、つくり手の私たちも、知らないことをたくさんの経験でお施主様から教えてもらえるのはありがたいと伝えてあげましょう。
 こうしたことが、上手なお付き合いにつながっていくと思います。定期点検だからといって必ずしも決まったことをすればいい、あるいはしなければいけないのではなく、そのつど臨機応変に対応できる体制をつくっていることが大切と思います。

点検時は気になる部分を事前にヒアリング

 会社設立から十数年、数多くの新築・増改築住宅を手掛けさせていただきました。数が多くなるということは、点検やアフターの必要な住宅が多くなり、管理が大変になります。

 私たちの履歴情報ファイルについては前回お話しましたが、定期点検の際は事前にこれをチェック。電話連絡で気になる部分をヒアリングし、ある程度のことを想定して、手だてができる準備をして行きます。また自分たちがそれなりの知識や技術を身に付け、専門職を呼ばずとも作業ができるように心掛けています。

 とはいえ、ときには専門職の手助けも必要となりますから、都合を打診して点検時間に合流してもらえるよう連携をとります。そして住まいの問題を解決したら、その日か翌日の終礼や月イチのスタッフ会議で報告。社内全体で情報を共有化し、業者会議などでも最近の事例として発表します。

 また材料や設備でのトラブルに関しては、もちろんメーカーにも内容をフィードバックし、改善に向けて努力してもらえるよう回答を求めます。たくさんの人たちで創り上げた大切なお施主様の財産だからこそ、いつのときもさり気なくサポートしていく義務が私たちにあるのではないでしょうか。

自然にOB施主と付き合いが生まれる

 そうした思いで取り組んでいるせいか、ありがたいことに大きなトラブルもなく、いままで建てさせていただいたお施主様とのお付き合いは順調に経過しています。

 実際、いまの夏休みの時期は、必ず数組のお施主様が夏の親子工作の相談に来ます。どんなものをつくりたいのか、材料や図面、製作計画をいっしょに考え、でしゃばりすぎないアドバイスをさせてもらいます。だいたいの親子が、当社に来て準備・段取りを終えるとそれを自宅に持ち帰り、製作に取り組むようです。

 そして子どもたちが学校に登校する前に、できあがったものの写真や、つくっていたときの様子がわかるお手紙をいただきます。とてもうれしい財産です。そんな関係をとても誇らしく感じています。
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点検を背景に自然なOB施主コミュニケーションをかたちづくっていく。
夏休みの時期には、同社の作業場に必ず数組のOB施主が親子工作の相談に訪れる。

住まいの問題と対処は協力会と、メーカーにもフイードバック。
みなで施主と地域の財産を守る


 困ったとき、悩んだとき、楽しいとき、嬉しいとき、その時々で自分たちがいろいろなお手伝いをできる関係。社名に込めた『親しみのある和やかな家づくり』を、今後も実践できればと思っています。

工務店もまた地域の人に育まれている

 私たちの暮らしている庄内地方の鶴岡と酒田は、隣接しているにもかかわらず、気象条件が違います。鶴岡は雪が多いので、軸組は骨太で雪対策を重視します。それに比べ酒田は、海沿いなので風が強い。だから風の対策が重要です。

 ほんの25kmの45分前後で行き来できるところなのに、生活習慣が違ってきます。ですが、どちらも寒い時期での対策が関係しているので、高性能(高断熱・高気密・耐震・エコロジー)の住宅が求められていると言えるのです。

 人の命を守る器である住まい。これからの住まいの常識は、やはり高性能住宅でしょう。余談ですが、庄内人はその地域によってそれぞれの気質を持っています。

 鶴岡の人たちは城下町で温厚な性格のせいか、自分の意見をなかなかダイレタトに話してくれません。ですが、気に入ってもらえればぞっこんとなります。逆に酒田の人たちは、港町(商い町)のせいか、わりとはっきりと意見を言います。威勢がいいのです。

 そんな人柄との付き合いのなか、それぞれの家族の想いを形にしていきます。鶴岡の人たちには、根気強く話を聞いていく姿勢が必要です。酒田の人たちには、あまり自分たちだけの思い込みになり過ぎないように調整する必要があるようです。

 とはいえ、どの家のプランニングも楽しい。自分がその家の主婦となり、家族の笑顔を増やせるプランを提案します。だから一つとして同じプランができないわけです。十人十色の想いをどれだけ形にしてあげられるか、家族全員の想いを組み込んであげられるかがつくり手の醍醐味であり、技術ですね。
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by shinwasouken | 2009-08-30 16:00 | 連載-新建ハウジング +1

工務店の家守り術 私の「家守り」スタイル④

> 2009年 6月30日  P49/P50/P51 掲載
 ・ 新建新聞社
   工務店のための実務ノウハウ  『新建ハウジング プラスワン』 No.482

私の「家守り」スタイル
  人の暮らしを支える工務店 -その4-


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〓 見学会で「家の慣らし運転」
1ヵ月後から点検が始まる 〓


「長期優良住宅」に思う

 「長期優良住宅」 の申請にかかる費用や労力は、すべて住まい手であるお施主様にのしかかります。しかも杓子定規な全国一律の内容は、地域の気象条件や慣習の違いを汲み取ることもなされていません。

 住宅履歴書の整備にしても、すべてをデジタルデータにしてコンピューターに入れ込み、入れ込んだものを管理すれば簡単という発想になっていますが、それはパソコンを使える人だけの話。さらにコンピューターに頼りすぎる体制は、非常時の対応など、思わぬ落とし穴がありそうで危惧します。

 基本は、書類をきちんと管理できる体制を自らつくることだと思います。その結果、人によってはアナログのほうがやりやすいこともあり得るでしょう。

 とはいえ、悪かろう安かろうの住宅づくりを是正したいという思いはわからなくもありません。とりあえず、しばらく状況を傍観していようと思います。私たちの家づくりはす
でに、長期優良住宅として認定を受けられる水準であり、またアフターも実施していると考えています。

見学会は建物の最終チェック

 さて、私たちは協力業者さんやメーカーさんを含め、たくさんの人の手で大切につくり上げた住まいをお施主様に引き渡す前に、見学会(『完成建楽会』と呼ぶ)を行います。

 通常、見学会の第一目的は集客・営業かと思います。しかし私たちは、その家を全館くまなく終日に渡りチェックすることを第一目的にしています。期間は3日間で、ほぼ全部のお施主様にお願いしてご了解を得ています。要は家の慣らし運転で、新しい住まいでお施主様が迷わず過ごせるかどうか最終確認するのです。

 人間がつくるものですから、絶対大丈夫とは言えません。事前の空調チェック、設備・躯体チェック、仕上げチェックなどは、お施主様に安心してもらえる住まいの裏付けを取る作業です。この裏付けを取り終えてから、お施主様の希望する吉日に引き渡します。

1カ月後から暮らしの点検始める

 引き渡しの際も、玄関からの動線にもとづき家中すべて説明します。しかし一度に説明しても頭に入らないので『困ったらいつでも連絡するように』と伝え、保証書や取扱説明書など資料一式をお渡しします。

 その後、一週間ほどして、どんな様子か電話で確認のうえ、迷っているようなら顔を出し、細かな説明をします。前回お話したように、どんなにいい家も住みこなせなければただの箱。せっかくの住まいですから、楽しく快適に過ごせた方が断然いいのです。

 だいたいのお施主様は、1カ月くらい経つと時計の位置やカレンダー・額の位置などを決め始めます。

 しかし、新しい壁に変な傷をつけたくないと言って、私たちに取り付けを頼んできます。それがアフターの点検の始まりです。1カ月くらいでは、住宅は何ら問題ありませんが、そこから家の住みこなし方を具体的にお伝えし始めるのです。

 室温の設定の仕方や換気設備の手入れ法、また最近はオール電化住宅が増えていますので、時間帯別の上手な家電製品やコントロールタイマーの使い方、IHヒーターでのお料理のレシピなど、楽しい住みこなしの工夫で話は盛り上がります。

 そして半年、1年と、オールシーズンにわたって季節ごとの住まい方を知ってもらうわけです。

履歴情報を抜粋して1冊のファイルに整理。
パソコンより使えるメンテナンス台帳


点検のための台帳で顧客管理

 アフターの点検に欠かせないのは、お施主様の住まいづくり資料、いわゆる履歴です。施工写真や図面、関係書類を邸別に保管しておくのはもちろんですが、そのままだと使いにくいので、私たちは点検のための台帳を別に作成しています。

 一つは1冊の大きなファイルを邸ごとのインデックスで区切ったもので、複数のお施主棟の情報を一括して管理できる台帳です。建築図書のなかから、点検に必要な情報を抜粋してファイリング。同時に一部の写真や図面、仕様書、家具リストなどを薄いファイルに閉じ込み、邸別にまとめて大きなファイルと連動させます。これは、お施主様用の履歴情報ファイルにもなるものです。

 そして点検・修繕を行うごとに新たな情報を加えていきます。引き渡し後の打ち合わせ記録も、すべてここに閉じ込みます。私たちは打ち合わせに「複写メモ」を用い、お施主様と話した内容や確認した事項をそこへ書き込みますが、1枚はお施主様に渡し、1枚は持ち帰ってファイルに添付するのがルール。こうすれば、大きな手間を掛けずとも細かなことが記録に残ります。

 こうして履歴情報を1~2冊のファイルにうまく整理し、1カ所にまとめておけば、お施主様の家の状況をす早く確認できる資料として使えるわけです。私たちは引き渡した家に対し年2回の定期点検を行いますが、この資料にもとづいて年間スケジュールを立てることができます。

OB客とは常に豊富な接点

 年2回の定期点検はハガキでお知らせし、日程を調整します。しかし定期点検時以外にも、お施主様の近くに行った場合は声を掛け、外部の見えるところを点検したり近況を聞いたり、今後のメンテナンスに必要な内容を伝えたりします。

 またOBのお施主様には前述の『完成建楽会』(年数回開催)の連絡ハガキを必ず送るので、それが到着したタイミングでもいろいろな電話をいただきます。日頃からとても近い関係が保たれているわけです。

 実際、OBのお施主様とのお付き合いは、年賀状でのごあいさつから始まり、完成建楽会の連絡、定期点検の連絡、暑中見舞いのハガキ、スタッフ全員で手分けしてのお中元・お歳暮、カレンダーの配達とひんぱんです。玄関先でスタッフが励ましをいただいたり、お礼の電話をいただいたり、ありがたい限りです。

 さらに年1回は、会社敷地内で夏祭りのイベントも実施します。お子様の夏の思い出づくりに、花火やスイカ割りも企画。ある年は、ちょっと目を放した隙に子供用プールに冷やしておいたスイカや飲み物とともに水遊びをしてしまった子どもたちがいて、洋服がずぶ濡れに。しかし『大工さんたちといっしょで楽しかったのかも…ね』と、お母さんも笑顔でいてくれました。

対話と交流で思い伝わる

 住まいは年数が経つと多少の劣化は出てきます。住まいの変化にいち早く気付き、劣化がひどくなる前に発見できるのは、一番は実際に住んでいる人。人間の五感で気付くことは多いのです。そのためにも、つくり手からの情報発信は大事です。

 たくさんの人たちが思いを込めて大切に家をつくり上げることで、住まい手にその思いが伝わり、また時間を共有することで絆が生まれ、ともに住まいを育む気持ちが生まれてきます。そうした交流や対話がなく、ただ家を売買しても、家を長く大切に使っていこうという流れにはならないのではないのでしょうか。

 家は人とともに成長し、大切に育てていくものだと考えると、つくり手がプロとしての技術と培われた経験で住まい手をサポートしていくことはとても重要です。それが「長期優良住宅」の基本になればいいのですが…。『長期有料住宅』にならないよう、試行錯誤しながら良い方向に導いていけたらいいですね。



●見学会→引き渡し→1ヶ月の間で家の使い方を何度も説明
「慣らし運転」を経て、家の住みこなしを施主に説明する。空調や換気の管理、省エネにつながる家電の制御、IHクッキングヒーターの使い方など、伝えることはさまざま。
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「慣らし運転」を経て、家の住みこなしを施主に説明する。空調や換気の管理、省エネにつながる家電の制御、IHクッキングヒーターの使い方など、伝えることはさまざま。

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引き渡し1ヵ月後の点検の際、住まい完成のお祝い額と「家づくり写真集」を記念に渡す。通常、施工写真は約400枚撮影。施主からも喜ばれている。

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●履歴情報の管理は自分たちがやりやすい方法で
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 まず層歴をしっかり残すことが前捷。そのうえで、情報を活用しやすいよう工夫して管理する。メンテナンス用の台帳をつくってもいい。
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本棚に納めた履歴情報のファイル

●定期点検以外でもとにかくOB客との接点を切らさない
関係維持に向け、いろいろなしくみ・手法を持つ。案内ハガキ、年賀状・暑中見舞い、お歳暮、お中元、イベントなどでつながりを保つ。営業のためというより、ともに住まいを守っていくため。
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by shinwasouken | 2009-06-30 16:00 | 連載-新建ハウジング +1

工務店の家守り術 私の「家守り」スタイル③

> 2009年 4月30日  P28/P29/P30/P31 掲載
 ・ 新建新聞社
   工務店のための実務ノウハウ  『新建ハウジング プラスワン』 No.476

私の「家守り」スタイル
  人の暮らしを支える工務店 -その3-

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〓 外壁張り替えとともに断熱強化。
内部の解体を極力減らすことで、住みながらの断熱改修が可能 〓


外壁とともに断熱改修 内部は隈定し住みながら

 対象は築18年の建物。外部の傷みが激しかったため外壁を全面的に張り替えるという内容ですが、合わせて内部の確認とともに断熱改修まで行い、今後の生活の快適性と住宅の資産価値を高めようということになりました。

 その際、内部に関しては極力、解体部分を減らすことを提案。解体すると産業廃棄物が多く発生しますから、費用もかかるし地球環境にも悪い。間取りの変更を最小限にとどめられるのであれば、住みながらの工事も可能な選択となります。

 既存の仕上げ材料も、そのまま内装下地としてできる限り使用するかたち。差し障りがある部分のみを、取り除いて廃棄処分にしました。

 たとえば、いままでの床材を補強材代わりに用い、新規の床材をその上に施工する。また壁はクロスを剥がし、補強の意味を含めて石こうボードのジョイント部のビス止めとパテ処理を行ったところに、仕上げ材を施工する。

 そのようにして、内部は全面の張り替えではなく、建物のバランスの悪さによって歪みが発生していた個所のみ補修するという具合です。

断熱改修でC値0・9Q値1・5を実現する

 一方、外部に関しては全面的な外壁改修となるわけですから、解体は仕方ありません。Ⅰ地域レベルの断熱・気密性能の確保を条件として、次のような断熱改修を行いました。

 屋根は、本屋は瓦を降ろさず、小屋裏から垂木間にフェノールフォーム35mmを充てんのうえ下から50mmを付加。小屋裏利用のない天井部分は合板の上に50mm、下に100mmの高性能グラスウール24Kを充てんしました。また下屋は瓦を降ろし、既存の屋根下地材の上にフェノールフォーム35mm+50mmを外張りしました。

 壁は、内部の解体のない部分に関しては、外側より高性能グラスウール100mm24Kを柱間に充てん。耐震補強のための構造用合板を張り、そこへフェノールフォーム50mmを外張りして付加断熱しました。

 基礎は布基礎でしたが、基礎断熱することとし、外側にスチレンフォームB3種75mm、内側に同30mmを施工。さらに床下全面に防湿防蟻シートを敷いて湿気上がりを断ち、基礎外周の内側には同じくスチレンフォーム25mmを敷き込んで断熱施工しました。

 各部位の断熱・気密施工は、連続性が重要です。断熱欠損が起きないよう注意し、気密部材を適切に使用していきます。

 開口部は、樹脂サッシLow-E・Arガス入りのトリプル窓に入れ替えて断熱を強化。同時に南面は太陽熱を有効に使えるプランニングにしています。

 その結果、リノベーションでありながらC値は気密測定で0・9c㎡/㎡。熱損失係数Q値はシミュレーションで1・5W/㎡・kになりました。実測ではそれ以上の性能結果が出ています。
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住まい方の工夫も促し省エネで快適な生活

 換気は第三種、暖房システムは温水器550L1台での温水パネル暖房と高効率エアコン仕様。それで間欠暖房します。断熱・気密性能が高いので、間欠運転に制御しても、ヒートショックを起こす10℃以上の温度差が家に生じません。

 2~3℃の温度差は許容範囲という観点で、寝る1時間前にコントロールタイマーで温水を送るポンプをオフに。朝は5~8時まで運転し、日中は夕方まで保持カで対応します。多少寒いときはエアコンを1~2時間ほど運転し、夕方4時からパネルヒーターの再運転に切り換えま
す。

 温度・湿度のバランスを上手に管理、調整することでエネルギーロスを減らし、42坪の家全体を快適な温熱環境にしています。また給湯はエコキュート460Lで、第三種換気の排気を温水器設置室の空間に入れ込み、エコキュート室外機の背面に吹き出させて排熱利用しています。

 これらを総合し、光熱費は以前の1/3以下になる見込み。建物のつくり方と住まい方の工夫により、既存の住環境を、小さなエネルギーで熱源をまかなえる省エネで安心安全な住環境へ変えていくことが、断熱リノベーションの目的です。

 今回は住みながらのリノベーションですから、お施主さんは実際、家の性能が手に取るように変わっていくのがわかります。半面、どんなに養生をしっかりやっても、工事中は家のなかが汚れてしまいます。

 つくり手・住まい手のどちらも『お互い様』『ご苦労様』の気持ちがないとできない仕事。双方がやれることをやり、ともに創り上げていくことも大きなポイントです。

「住みながら」の断熱改修のポイント
①傷んだ個所の見極めと改修範囲の明確化
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雨漏りによるベランダ立ち上がりの木部の傷み

 最初に大事なのは、施主が改修を考えるきっかけとなった不具合の発信する「信号」を、工務店がしっかり読み取ること。ヒアリングで不安点をあげてもらい、その要因をできる限り特定する。そして、床下などは潜ってみることで傷みの程度を検証、必要な対策を確認したのち工事に入っていく。

 こうした前段階を経て、今回は外部(一部木部)の傷みが激しかったために外壁を全面改修。合わせて断熱強化を図ることとし、内部は必要な部分のみの補修に留めた。

 内部の解体を最小限に留めることで、廃棄物の発生を抑え、住みながらの改修も可能になる。ただし、住みながらの改修はつくり手・住まい手ともにストレスなので、ともにつくるという意識を共有することが重要だ。
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内部は範囲を限定して計画することで住みながら断熱改修

②断熱手法の組み合わせと適切な施工
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壁は基本的に外張り断熱で改修

 外壁を壊して構造用合板で補強するため、壁は基本的に外張り断熱。ただし軸間にも充てんし、付加断熱とする。壊す範囲や壊し方、壊したときの状態によって適切な断熱方法を選択。そのうえで、欠損が生じないよう断熱・気密の連続性を保つ。開口部の強化も重要になる。
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軸間にもグラスウールを充てんして付加断熱

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小屋裏の気密施工。欠損が生じないようすき間をふさぐ

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基礎断熱して床下を防湿

③住まい方の工夫を促す
 温熱環境が変わり住みこなしが便利になることで工夫が生まれ、住まい手はエコな生活を考え始める。上手な住みこなしによってエネルギー使用量を削減し、投資以上に大きな成果が生まれるようにする。



断熱リノベーションの効果
 温熱環境がよくなると、部屋の温度差、結塵やカビがなくなり、身体への負担が少なくなって、住みこなしの工夫を考える余裕が生まれる。メンテナンスの負担も軽減され、家の長持ちにつながっていく。
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by shinwasouken | 2009-04-30 16:00 | 連載-新建ハウジング +1

工務店の家守り術 私の「家守り」スタイル②

> 2009年 2月28日  P26/P27/P28 掲載
 ・ 新建新聞社
   工務店のための実務ノウハウ  『新建ハウジング プラスワン』 No.470

私の「家守り」スタイル
  人の暮らしを支える工務店 -その2-

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〓 建ててから顧客に伝えることも多い。
住みこなせなければ、家はただの箱になってしまう 〓

顧客意見重視だけでは家はよくならない

 家を建てるとき、工務店はお施主さんの希望を聞き、お施主さんに選んでもらえるプランニングやデザインをするのが重要と言われます。ただしそのとき、地域の気候風土に合った内容まで提案できているかというと、疑問が残るのが現状です。

 お施主さんに選んでもらえるプランニングやデザインであれば、ハウスメーカーなどはまさに長けている。しかし、全国統一的な考え方だけに、建ててから後悔しているお施主さんの声を聞くことも少なくありません。

 あたり前のことですが、お施主さんのためになるのは、意見を100%聞き入れることではないとあらためて思います。むしろ、プロとして必要不可欠なことを教えてあげるのが工務店の大事な仕事です。

 プランニングやデザインも、それにより山形・庄内地方の風雪や高温多湿といった土地柄をある程度緩和してあげられるはず。受注ほしさに「いまどき」の流行のみに走ってしまったら、住まいの寿命はますます短命になつていきます。

 その意味では、断熱性能を数値できちんと計算し、暖房負荷をシミュレーションして「この家は暖房費いくら」とわかりやすく教えてあげることなどは、工務店の条件と言えるかもしれない。少なくとも「山形県はⅢ地域だから中断熱・中気密でいい」「断熱さえよければ気密は必要ない」などといった説明は、もうやめるべきではないでしょうか。

 かといって、数値さえクリアしていればいいというわけではありません。住まい全体のバランスや住まい方を考えず、数値判断だけで換気や暖房を選んで設置するのはやはりプロとして恥ずかしい。
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生活のイメージを表現する親和創建の平面プラン。顧客の暮らしに寄り添っていく姿勢が伝わる。

お互いの思いを反復し ともに家をつくる

 最近は家を建てるにあたり、お施主さんたちもいろいろな知識を持っています。それは進歩的なことで、知らないよりは知っていたほうがもちろんいい。しかし、知識だけで満足のいく家ができるわけではありません。知識は一つの要素にすぎないことをわかってもらったうえで、私たちの意見や考え方も聞き入れてもらう必要があります。

 経験による知識の裏付けという部分では、私たちプロが絶対に勝っています。では、お施主さんの希望に対しプロとして答えを与えさえすればいいのかというと、そうではないと思える。「こんな家を建ててほしい」というお施主さんの思いのほうが、私たちの答えよりおもしろい場合も多いのです。

 お施主さんの思いと私たちの思い。どちらかが「押し付け」になったら、いい家はできない気がします。よく顧客と目線を合わせると言いますが、私たちにとってお施主さんは家を提供する相手に違いありませんが、同時に、いっしょに家をつくっていく存在でもあります。

 お互いの思いを反復し、答えを探るから一つとして同じプランができないし、その家族だけの家が完成するのです。たくさんの人たちが協働するなかで、初めて想いがかたちになるのだと思います。

アドバイスできる住まい方は数多くある

 家の場合、とくに高性能な家の場合は、いかに住みこなすかが満足度に大きく影響します。

 前回も触れましたが、引き渡し時点で100%の満足ということはない。住みながら満足は上がっていくものです。逆に住みこなせなければ、どんないい家もただの箱になってしまう。

 ということは、家を建ててからもお施主さんに伝えることは多くあります。家を買う・売るといった関係に終始していたら、そうした大切なフォローができません。

 思い付くまま例をあげると、庄内の冬で住まいの快適温度は20℃前後。それで「寒くない」生活をしてもらうのが、私たちの基本的な考え方です。それ以上に室温を上げれば温湿度のバランスを崩し、過乾燥を引き起こしたり、動けば熱い状態になったりする可能性があります。

 いくら高性能といっても、冬なのだから、一枚多く羽織るといった住まい方も大切です。そうすれば室温を高める必要がなく、余計な光熱費もかからず、地球環境にもお財布にも優しくできる。

 また、ちょっと乾燥すると感じるときは、加湿器代わりに観葉植物を置いたり、寝る前に洗濯物を部屋に干したりして湿度を調整してもいい。24時間換気システムの強弱のコントロールを季節で工夫するのも、上手に快適な生活をするうえでのポイントです。

 こうした具合に、アドバイスできることはたくさんある。みんなの力で大切に創り上げたとても大きな財産だからこそ、大切に住みこなしてもらわなければダメだと伝え、ときどき遊びがてらの点検を行っているのが私たちのアフターです。

OB施主の言葉は、しみじみと本音で相手に深く伝わる。
それができることこそ工務店の強み

OB施主が住まいのよさを広めてくれる
 ですから、いままでに建てたすべてのお施主さんの家が、私たちの「モデルハウス」です。

 昨年末にも『家を建てたいのですが…』と、アポ無しで突然事務所を訪ねてこられたご家族がありました。私は出先にいたので少し待っていただき、事務所に戻ってお話を聞くと、ご主人がOB施主さんの後輩で、何度か家に遊びに行ったことがあるということでした。

 また奥様が現在建てているお施主さんの仕事仲間で、家づくりの経過を何度も開いて、とても楽しそうだったから(私たちの事務所を訪ねてみた)・・・とのことでした。思いがけない偶然です。

 さっそく家を体感してもらうことにしました。建築中の現場に足を運んで構造躯体や断熱気密の施工状況を見てもらい、OB施主さんに即アポを取って家に訪問しました。ショールームのようにきれいに飾ってあるところではなく、実生活を営んでいるOB施主宅で生の声を聞いたほうが、そのご家族にとってよい参考になるからです。

 しかも、実際の温熱環境を疑いなく体感できます。『温度のバリアフリー』が基本ですから、どのOB施主さんの家に行っても同じ体感ができる。この日に見せていただいたOB施主さんご夫妻は、建築したときの様子を感慨深く話してくれました。

 「内装の仕上げを決めるときなんか、つい時間を忘れて深夜を回ったこともあったわよね。あのときは付き合わせちゃってごめんなさいね」こんな風に人のつながりを仲介し、コミュニケーションを手助けできるのだから、工務店の仕事はやっぱりすごいのだと感じます。私たちだけだったら、どんなにいいことを話しても、営業トークとしてしか伝わらない。しかしOB施主さんの話す言葉は、しみじみと本音での語りなだけに、相手に強く深く伝えることができます。

 それができることこそが、一人ひとりのお施主さんにきちんと向き合い、きちんと快適な住まいをつくり、その後もきちんとお付き合いをしていける地場工務店ならではの強みではないでしょうか。

 事務所を訪ねてくれたご家族とは、その後、順調な打ち合わせを繰り返しています。こうしたかたちで、お施主さんが私たちの代わりに高断熱・高気密の住まいのよさを多くの人たちに知らず知らず広めてくれる。私たちの目指す本来肝住まいづくりの姿がそこにあります。


リノベショーンの効果

 山形・庄内地上万では、部分間欠暖房の住まいは冬になると4割以上が物置に変わります。なぜなら、寒い部屋には家族が近寄らないからです。かといって、そうした部屋が春になったらすぐ復活するかというと、片付けが面倒になり結局そのままだったりします。

 そうした住まいを「リノベーション(断熱改修)」し、少ないエネルギーで全館暖房を可能にすることで、部屋ごとの温度差がなくなり、100%利用できるようになります。効果は計り知れません。

 いままでの生活空間・生活環境が変わり、動きが楽になる。いやな湿気がなくなる。カビなくなる。結露が起きない。気持ちがおおらかになる。ゆとりが生まれる。などなど…その様子は親和創建ホームページの家づくり日記でも詳しくお伝えしています。
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by shinwasouken | 2009-02-28 15:30 | 連載-新建ハウジング +1

工務店の家守り術 私の「家守り」スタイル

> 2008年 11月30日  P80/P81/P82 掲載
 ・ 新建新聞社
   工務店のための実務ノウハウ  『新建ハウジング プラスワン』 No.461

私の「家守り」スタイル
  人の暮らしを支える工務店 (連載開始)

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〓 関わった人たちが、地域のなかで
楽しく生活するために、住み方さえ含めてアドバイスする 〓



家への意識を変えた高断熱・高気密住宅
 17年前、建築業界に身を置く前に建てた我が家。俗に言う普通の木造在来工法の、性能も何も考えなかった住まい。ただ雨風がしのげて、自分たちの好きなプランができればいい。家なんてそんなものだとばかり思っていました。

 そして、我が家を建てて3年後。建てた時の楽しさもあり、自分のように家を建てたい人を応援したい気持ちもあって、電子業界から建築業界に転身。いろはの「い」から勉強を始めました。

 山形に高断熱・高気密の住宅が見られるようになってきたのは、それからしばらくして。私が勤めていた工務店でも高断熱・高気密のモデルハウスを建設することになり、その完成見学会の段取りを任され、事前準備をしていた冬のことです。

 当時、私の意識では、家のなかは冬寒いのがあたり前。しかし、モデルハウスの玄関を開けると、誰もいないのに『ふわぁ~』と暖かな空気。まるで、家が人を待ってくれていたかのように―。

 カルチャーショックを受けると同時に、悔しさがこみ上げました。

 「自宅を新築して5年しか経っていないのに、こんな家を建てる技術があるなんて。5年前にこうした家を見ていたら、間違いなく建てていたはず」

 このとき、既築の家を「寒くない家」「温度のバリアフリーの家」に生まれ変わらせてやろうと、心に決めました。それが、いま私たちが取り組む断熱改修の原点です。

新築で性能を出せないと断熱改修はできない
 私は8年前に勤めていた工務店をやめ、現社長の五十嵐の独立を手伝うかたちで、親和創建の立ち上げから関わりました。平均年齢34歳の若い工務店で、社員8人のうち5人が大工の技術者集団。普及している一般的な技術で、冬寒くない温度のバリアフリーの家をつくろうと取り組んでいます。
 スタートからしばらくは新築オンリーでしたが、2003年に初めて断熱改修を実施。いまは「リノベーション」と呼んでいますが、当時は「断熱電化リフォーム」と言っていました。

 住みながら断熱改修するために、メリットの高いのは外張り断熱工法です。ただし、新築でしっかりした性能を出せる技術力があることが不可欠。Q値1・6W/㎡・k、C値0・5c㎡/㎡が最低基準で、これを新築で実現できなければ山形でリノベーションはできません。それくらいリノベーションは奥が深い。

 しかし、逆に言えば、性能は一定の技術があれば出せます。技術については専門家の解説書などを参考にしてもらったほうがいいと思うので、多くは触れません。

 その代わり、この項の『工務店の家守り術』というテーマに即し、私たちがリノベーションや新築を通じてお施主さんと、その家と、どんな思いでどのように関わっているのかをできるだけ具体的に紹介していきたいと思います。
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住み手の生活にどう関われるかが大事

 断熱改修をやっていると、同業者の方から「家の性能ってそんなに大事ですかね?」と聞かれることがあります。その答えは「私たちは何をやっている、どういう存在なのか」にかかってくる。

 結論から言えば、私は、私たちに関わった人たちが、地域のなかで楽しく、豊かに生活するために、住み方さえ含めてアドバイスできるのが工務店だと思っています。それはリノベーションでも、新築でも変わりません。

 家が新しくなり、いままでと生活が変わる。住み手は自分たちの望む暮らしを求め、それぞれに思いを持っていろいろな工夫をする。それに対し、いかにアドバイスできるか―。

 「どうせだったら快適に住もうよ。それも、できるだけエネルギー消費を抑えたかたちで」

 それが私たちの最も根本的なアドバイスであり、その元になるのが性能です。だから、基本性能に関する仕様は差別化もオプション化もしない。誰に対しても、同じものを提供します。

 また、引き渡しの時によくお施主さんに話すのは「(新築・改修だけで)家に100%満足することはないよ。住みながら満足は上がっていくんだよ」ということ。やっぱり家を大事に使い、生活をしていくなかで、いろいろなことを育んでほしいと思っています。

 そこに私たちがどう関わっていけるかが、一番大事なことではないでしょうか。

ネットワークの中心にいて顧客に情報伝える

 先日もお施主さんから電話がきて「温水式暖房の、タンクのお湯の設定温度は、高いほうが燃費がいいんじゃないの?」と開かれました。

 電気でお湯を沸かすものですが、私たちも最初に考えたのは、最高温度に設定しておいたほうが復帰率がいいのではないかということ。しかし、実際はそのほうが電気を食う。

 たとえば90℃に設定しておいて75℃のなったものを上げるのと、75℃に設定しておいて60℃になったものを上げるのでは、前者のほうがロスが大きい。これは以前、2件のモニターで実際に調べて分かったことです。

 だから、お施主さんには「高温に設定するのはやめたほうがいいよ」と。自分たちが給湯と暖房に必要なお湯の温度設定を上手にコントロールし、余分に温めないことが、電気をなるべく使わないようにするコツだと話しました。

 また最近は、全室24時間暖房とはいえ、本当にずっと入れ放しにしておく必要があるのか確かめたいと考えています。蓄熱型のシステムなら別ですが、私たちは温水式パネルヒーターなので、共働きの家庭であれば日中は消し、帰ったらスイッチを入れる使い方でいい気がする。

 このことを調べ、もし電気の使用量が下がれば、お施主さんたちに伝えたい。みなで温暖化防止にも貢献できます。

 そんな具合に、生活にまつわるいろいろな情報がお施主さんから発信され、私たちが仲介して、またお施主さんに発信していく。そうしたネットワークの中心にいるのが工務店だと思います。つくることだけが仕事ではない。

リノベーション[断熱電化リフォーム]
断熱材の建て込み
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初めて行ったK邸(酒田市)のリノベーション
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断熱仕様の比較
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着工2003.11初旬~2003.12下旬

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by shinwasouken | 2008-11-30 16:00 | 連載-新建ハウジング +1
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あなたの住まいを一緒に育てたい


by shinwasouken
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