工務店の家守り術 私の「家守り」スタイル⑤

> 2009年 8月30日  P51/P52/P53 掲載
 ・ 新建新聞社
   工務店のための実務ノウハウ  『新建ハウジング プラスワン』 No.488
私の「家守り」スタイル
  人の暮らしを支える工務店 -その5-


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〓 点検を背景に暮らしを
さり気なくサポート。半年間で頼れる存在に 〓


点検しながら生活に密着した情報を提供

 私たちの場合、定期点検の最初は引き渡し後1カ月以内。「使い勝手はどうですか?」「住み心地はいかがですか?」と、電話連絡や顔出し訪問をします。そのあと、3カ月から6カ月以内に季節の使い勝手を説明に行きます。

 内容は、寒い時期なら暖房の使い方や温湿度のバランス。いままでの生活のように暖めすぎないことがポイントです。具体的には20℃前後の室温と、45%前後の湿度を保持する。高性能住宅であっても動くと汗ばむような設定はダメで、適度な服装や部分採暖でエコ生活を送る工夫を伝えます。

 暑い時期なら、涼しい時間帯の外気の取り入れ方やグリーンカーテンによる日差しの遮断の仕方などを話します。あるいは、家庭菜園と組み合わせた一挙両得な提案。実施しているOB施主様の例や、住まい手としての私たちの考えを説明します。

 暖冷房以外にも、たとえばガスコンロからIHに変更したお施主様の、お料理の感覚が違うという悩みに対するアドバイス。タイマーや余熱を使ったお手軽料理を提案します。また、あらわしにした梁の上の掃除方法などもよく聞かれることです。

 半年くらいでは住宅は何ら問題ありませんが、この間に、より生活に密着した情報を提供していくことで、一番近い頼りになる工務店になっていけるのではないでしょうか。

施主に動いてもらい保守の経験を積ませる

 私たちの定期点検はこのようにスタートしますから、当然、お施主様には「いつもと違う?」「これで良かったのかな?」と思ったときは些細なことでも迷わず連絡してほしいと話しています。

 連絡をいただくことで、仮に何もなければ安心できるし、何かのトラブルの前兆であれば未然にそれを防止できます。このときのポイントは、電話をもらったらできるだけ早めに駆けつける、というだけでなく、状況を十分に聞いて応急処置の仕方を伝え、お施主様にも動いてもらうということです。

 たとえばボイラーが突然停止してしまった場合、本体または操作パネルに何のエラー番号が出ているかをお施主様にチェックしてもらい、その内容を取扱説明書などで確認してもらいます。そこにはトラブルの原因と対処法も書いてあるので、よく認識してもらって、業者に頼むかどうかの判断を委ねます。

 半密閉タイプの温水暖房の場合、水の補給だけで直るケースもあるので、そうしたときはお施主様自らがトラブルに対処することで、次の突発事態に対応できる経験を積むことになるのです。

トラブルを自分で解決できたことが自信に

 ほかにも、照明器具の「ホタルスイッチがついていない」「スイッチが壊れたみたい」といった連絡に対しては、大半が本体との連動によるものだと説明し、電球を交換してもらって点くかどうかを確認してもらいます。点いた場合は電球の芯切れが原因で、そうでない場合は照明器具本体かスイッチの故障です。

 こうしたことを一つひとつやってもらい、ときにはやって見せ、保全の仕方をお教えしていきます。住まいのトラブルを自分で解決できれば、それはお施主様の自信につながります。

 実際、お施主様は「こんなことくらいで電話していいのかな?」「笑われたりしないかな?」と思う気持ちがあって、連絡を躊躇していることが多いのです。そんなときは、つくり手の私たちも、知らないことをたくさんの経験でお施主様から教えてもらえるのはありがたいと伝えてあげましょう。
 こうしたことが、上手なお付き合いにつながっていくと思います。定期点検だからといって必ずしも決まったことをすればいい、あるいはしなければいけないのではなく、そのつど臨機応変に対応できる体制をつくっていることが大切と思います。

点検時は気になる部分を事前にヒアリング

 会社設立から十数年、数多くの新築・増改築住宅を手掛けさせていただきました。数が多くなるということは、点検やアフターの必要な住宅が多くなり、管理が大変になります。

 私たちの履歴情報ファイルについては前回お話しましたが、定期点検の際は事前にこれをチェック。電話連絡で気になる部分をヒアリングし、ある程度のことを想定して、手だてができる準備をして行きます。また自分たちがそれなりの知識や技術を身に付け、専門職を呼ばずとも作業ができるように心掛けています。

 とはいえ、ときには専門職の手助けも必要となりますから、都合を打診して点検時間に合流してもらえるよう連携をとります。そして住まいの問題を解決したら、その日か翌日の終礼や月イチのスタッフ会議で報告。社内全体で情報を共有化し、業者会議などでも最近の事例として発表します。

 また材料や設備でのトラブルに関しては、もちろんメーカーにも内容をフィードバックし、改善に向けて努力してもらえるよう回答を求めます。たくさんの人たちで創り上げた大切なお施主様の財産だからこそ、いつのときもさり気なくサポートしていく義務が私たちにあるのではないでしょうか。

自然にOB施主と付き合いが生まれる

 そうした思いで取り組んでいるせいか、ありがたいことに大きなトラブルもなく、いままで建てさせていただいたお施主様とのお付き合いは順調に経過しています。

 実際、いまの夏休みの時期は、必ず数組のお施主様が夏の親子工作の相談に来ます。どんなものをつくりたいのか、材料や図面、製作計画をいっしょに考え、でしゃばりすぎないアドバイスをさせてもらいます。だいたいの親子が、当社に来て準備・段取りを終えるとそれを自宅に持ち帰り、製作に取り組むようです。

 そして子どもたちが学校に登校する前に、できあがったものの写真や、つくっていたときの様子がわかるお手紙をいただきます。とてもうれしい財産です。そんな関係をとても誇らしく感じています。
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点検を背景に自然なOB施主コミュニケーションをかたちづくっていく。
夏休みの時期には、同社の作業場に必ず数組のOB施主が親子工作の相談に訪れる。

住まいの問題と対処は協力会と、メーカーにもフイードバック。
みなで施主と地域の財産を守る


 困ったとき、悩んだとき、楽しいとき、嬉しいとき、その時々で自分たちがいろいろなお手伝いをできる関係。社名に込めた『親しみのある和やかな家づくり』を、今後も実践できればと思っています。

工務店もまた地域の人に育まれている

 私たちの暮らしている庄内地方の鶴岡と酒田は、隣接しているにもかかわらず、気象条件が違います。鶴岡は雪が多いので、軸組は骨太で雪対策を重視します。それに比べ酒田は、海沿いなので風が強い。だから風の対策が重要です。

 ほんの25kmの45分前後で行き来できるところなのに、生活習慣が違ってきます。ですが、どちらも寒い時期での対策が関係しているので、高性能(高断熱・高気密・耐震・エコロジー)の住宅が求められていると言えるのです。

 人の命を守る器である住まい。これからの住まいの常識は、やはり高性能住宅でしょう。余談ですが、庄内人はその地域によってそれぞれの気質を持っています。

 鶴岡の人たちは城下町で温厚な性格のせいか、自分の意見をなかなかダイレタトに話してくれません。ですが、気に入ってもらえればぞっこんとなります。逆に酒田の人たちは、港町(商い町)のせいか、わりとはっきりと意見を言います。威勢がいいのです。

 そんな人柄との付き合いのなか、それぞれの家族の想いを形にしていきます。鶴岡の人たちには、根気強く話を聞いていく姿勢が必要です。酒田の人たちには、あまり自分たちだけの思い込みになり過ぎないように調整する必要があるようです。

 とはいえ、どの家のプランニングも楽しい。自分がその家の主婦となり、家族の笑顔を増やせるプランを提案します。だから一つとして同じプランができないわけです。十人十色の想いをどれだけ形にしてあげられるか、家族全員の想いを組み込んであげられるかがつくり手の醍醐味であり、技術ですね。
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by shinwasouken | 2009-08-30 16:00 | 連載-新建ハウジング +1
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あなたの住まいを一緒に育てたい


by shinwasouken
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