工務店の家守り術 私の「家守り」スタイル⑥

> 2009年11月30日  P22/P23/P24 掲載
 ・ 新建新聞社
   工務店のための実務ノウハウ  『新建ハウジング プラスワン』 No.497
私の「家守り」スタイル
  人の暮らしを支える工務店 -その6-

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〓 工務店と顧客は密接不可分の関係
ともにつくり、ともに守っていく


いっしょに創りあげた家だからこそ大切に

 一番目に紹介するのは若夫婦とお子さんが3人のご家族。まだお子さんが小さいので、常に目の届くところにいてほしい。家事の動線が便利で、お料理をしながらお洗濯やお風呂の段取りもできるのが理想。将来の予算や子どもたちの成長に合わせ、自由につくれる2階空間がいい、などの希望でした。

 なので、1階は大黒柱を中心に和室とリビングダイニングが続いている大空間。全室暖房ですから、廊下さえもお部屋のスペースにしています。2階は運動会ができるようなオープンさで、すごい迫力となりました[下の写真参照]。
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若夫婦に子供が3人の住まい。
高性能のメリットを活かし、2階を「運動会」ができるような大空間にした

 二番目は、ご両親と娘さんの3人家族。和風空間が好きなので、外観も玄関ホールのおもてなし部分も「和」を入れたい。和室と座敷の続き間がほしい。リビングのくつろぎスペースには小上りもいいよねと、そんな希望です。

 こちらも高性能住宅のよさを活かし、続き間の縁側は、部屋との間に戸を不要にしました。ゆったり和風の大広間が完成です。玄関正面は埋め込み飾り棚で季節のあしらいができるしかけをつくりました。
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和風空間が好きな3人家族の住まい。
続き間の縁側と部屋の間は戸を不要にし、ゆったりした大広間にしている

 2階の主寝室には、奥様が結婚したときに持ってきた婚礼ダンスで仕切って収納スペースをつくっています。いつでも、自分でいい大きさに変更可能です[プラン・左の写真参照]。
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 どの住まいも、お施主様が自らアイデアを出し、いっしょに創りあげてきたもの。だからこそ、大切に愛着を持って維持管理してもらっています。

 ほかの誰かがしてくれるのではなく、お施主様たちに家のベストな状態を知ってもらい、傷んだときはどんな手入れをしていけばいいかをプロとしてアドバイスする。そのための知識と技術を常に磨いていきたいと思います。

施主との対話によって私たちも育ってきた

 たとえば当社のお施主様のなかには、新築からのお付き合いではなく、他社とのトラブルの相談やリフォームをきっかけとしてお付き合いする方も多くいます。

 あるとき、知り合いに『家づくりって大変なものなの?大滝さんを見ているといつも楽しそうに仕事をしているから、楽しいものだと思っていたのに・・・。実は友だちがすごく苦しんでいるの』と言われました。

 そこで『だったら、話だけでも聞けるから連れて来てみたら?』と。そして面談してみると、その方はこれから新築が始まるのに、パートナーである工務店さんとの信頼関係がギクシャクして不安に押しつぶされそうになっていました。

 契約解消や工事の中断はできないとのことだったので、今後の考えられる不安要素を聞き、相手方と向き合う方法をお伝えして相談役になりました。いろいろな問題はありながらも家は無事に完成。しかし相手側の工務店さんとはその後お付き合いをせず、住まい方やアフターメンテナンスに関しての相談が私たちに来ます。

 私たちが建てた家ではないので、メンテナンスが有償になる場合もあるのですが、お金の問題ではないそうです。

 またあるお施主様は、お子さんが化学物質過敏症(農薬暴露による突然の発症)になっていてたくさんの制約があるけれども、中古住宅で購入した家をリフォームしたいという希望でした。いろいろな工務店さんに相談したものの簡単に「自然素材を使えば大丈夫」という話ばかりで・・・と、私たちの元に来られたのです。

 私たち自身、化学物質過敏症に関して深い認識があるわけでも、経験があるわけでもありませんでしたが、自然素材が万全ではないことだけは知識としてありました。そこで手探りしながら、自然素材を主とした素材のサンプルをお施主様に数日預け、その反応をみてからリフォーム計画を進めることにしました。

 この方は最終的に数年にわたって数回リフォームをお手伝いし、結果、快適に過ごしてもらっています。

 こうした体験をさせてもらうことが、自分たちにとっていい勉強となり、今後の糧となっています。

顧客を身内のように思うのは、あたり前の姿。
単に家を売る相手では家づくりは成り立たない


施主は売る相手ではなく身内のような存在

 お施主様のご家族それぞれが、いろいろな悩みや問題を持っています。これを解決してあげるには、まず、その悩みを打ち明けるタイミングをきちんとつくってあげることが必要です。

 そして次に、私たちつくり手は少しだけ専門的な知識を持っていますから、それを総動員してアドバイスをするということだと思います。

 家を建てるときの悩み、家を直すときの悩み、また住んでみた後だからこその悩みもあります。自社で建てたからではなく、どんな家であっても、住まい手が末永く家族とともに仲良く豊かに住みこなしてもらいたい。その思いの分、一つひとつの相談に耳を傾け、いっしょに悩み、解決する方法を探りたいと考えています。

 家づくりはお施主様がいなければ成立しません。しかし、お施主様を単に家を売る対象とだけ位置付けて受注活動を展開していたら、私たちのような工務店の経営はこれから厳しいと思います。

 私たちにとって、お施主様は単に家を売る相手ではなく、身内のような存在です。私たちは家をつくります(あるいは売ります)が、それは使ってくれる(買ってくれる)人がいて初めて成り立つこと。冒頭に紹介したプランなどは、ともに刺激し合って協働した結果から生まれたものにほかなりません。

 結局、工務店とお施主様は密接で分けることのできない関係。身内というのは誇張でも何でもなく、あたり前の姿だと思うのです。

 ですから、日頃からいろいろなことで連格が簡単にできるうえに、ときには甘えさせてもらったり、甘えてもらったり、お互いが支え合って生きています。そのなかで私たちはお施主様にはっきり思いを伝え、お施主様も私たちに思いをぶつけ、一定の緊張感を持ってともによい家、よい暮らしを目指しています。

 先日も、お施主様の家で何気なく言った「私たちが○○さんのために一生懸命建てた家なのだから、ちゃんとしてもらわないと困ります」という言葉に、当のお施主様が感激してくれて「私たち以上に我が家を大事に思ってくれている」と言ってくれました。

 こうしたことは受注戦略でも受注ノウハウでもありませんが、しかし私たちのビジネスそのものです。
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by shinwasouken | 2009-11-30 16:00 | 連載-新建ハウジング +1
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あなたの住まいを一緒に育てたい


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